奇跡と退屈

01.

愛でもない青春でもない
旅立たない

前田司郎

愛でもない青春でもない旅立たない愛でもない青春でもない旅立たない

青春とか愛とか、さして中身のない言葉はいらない。誰かに愛されているのか、誰を愛しているのかだってわからない。旅立つこともない。僕は毎日自分のふつうの日常を散歩しているだけ。だから、歩くための道はあったほうがいい。時間も空も、足も。誰かのために歩いているわけじゃないけど。日常はそれなりに幸福で、それなりに不幸だし。今もどこかで誰かが死んでいて、どこかで誰かが生まれている。そしてすべての人は生を死に続けている。それにいちいち涙は流さない。ただ食べて、出して、オイシイとかマズイとか言いながら。僕は何者でここはいったいどこなのか?まあどうでもいいんだけど。リアルなことはあるとは思うけど。リアルな……たぶん、この小説は。僕らの時代の現実は、そう簡単には……。
この小説は、恋愛小説かもしれないし、純文学かもしれない。そうでないかもしれない。ここにあるのはいわゆる青春ではない、しかし、まぎれもなく青春小説だ。

前田司郎(まえだ・しろう)

1977年東京生まれ。作家、劇作家、演出家、俳優。
和光大学人文学部卒業。1997年劇団「五反田団」を旗揚げし、作・演出を手がける。2004年「家が遠い」で京都芸術センター舞台芸術賞受賞。2005年に本作「愛でもない青春でもない旅立たない」を発表して小説家デビューを果たす。2008年戯曲「生きてるものはいないのか」で岸田國士戯曲賞、2009年小説「夏の水の半魚人」で三島由紀夫賞、2015年「徒歩七分」で第三十三回向田邦子賞を受賞。

「Dessin」

作詞/作曲/アレンジ:タカノシンヤ
Vo/Cho:峰らる
MIX/マスタリング/アレンジ:kentaro nagata a.k.a. ナギー

歌詞

曖昧な雲とダンスしてた
五反田の空は今日も藍

抱えてた全て放棄して
エンディングまでを知りたい

神様にバレないように昔話の続きを聞かせて
夢と現実を行き来してる明日も曇りの予報
垢抜けられずに両手振り上げて歩くbonjour

意識と無意識行き来して
備え付けられた関係

神様にバレないように昔話の続きを聞かせて
夢と現実を行き来してる明日も曇りの予報
仮初めの姿のまま重ね重ね成り行きに任せて
モラトリアムから見聞きしてる明日は晴れると思う
垢抜けられずに両手振り上げて歩くbonjou

Frasco

Frasco / フラスコ
2015年5月 タカノシンヤ(曲・企画)と峰らる(歌・デザイン)の2人によって結成。
日常と非日常のミックス「マジックリアリズム」をコンセプトとしてポップミュージックの制作を行い、渋谷、代官山を中心にライブ活動を行う。2015年秋~2016年春にかけJ-WAVE RADIO SAKAMOTOにて計3回の楽曲が優秀作品として紹介され坂本龍一、ユザーンに賞賛される。
2017年1月18日に配信限定で“Theatre"をリリース。同曲はAR三兄弟 川田十夢がプロデュースした六本木ヒルズ展望台「星にタッチパネル劇場」の主題歌として制作され、Frascoは同イベントの効果音も担当した。その後、Spotify「Viral 50チャート」日本版DAILYでJamiroquaiに次ぐ4位に入るなどスマッシュヒットを達成する。大手企業のCMソング制作やNHKへの楽曲提供等枠に捉われず幅広く活動中

エンディングソングを聴く小説を読み終えてからお聴きください

COMMENT

「小説のエンディングソングを作ってほしい」
そんな不思議なお話しをいただいた時、「なんと素晴らしい企画か!」と興奮したのを覚えてまいます。

「愛でもない青春でもない旅立たない」は、日常と非日常を行ったり来たりするマジックリアリズム的な表現がFrascoの音楽と親和性が高い作品だと感じました。
読みながらトラックを作り、読み終わった後イッキに歌詞を書き下ろして完成されたこの曲はFrascoのアンニュイな部分を詰め込んだ作品となっています。
朝に、昼に、夜に、真夜中に、家で、街中で、公園で、喫茶店で、、小説を読んだ後の皆さんの生活にフワッと寄り添える曲であればと願っています。

Frasco タカノシンヤ

今回は素敵な企画に参加させていただきありがとうございました。
この小説の独特な浮遊感を味わいながら聞いていただけたら嬉しいです。

Frasco 峰らる

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